特許情報からは業界の動向やトレンド、技術用途をはじめ、様々な情報を読み取ることが出来ます。Tokkyo.Aiの分析機能を使うことで企業の動向をつかみやすくなります。
そこで今回は、「住友化学」について分析をしていきたいと思います。
住友化学は、日本を拠点にする総合化学メーカーであり、幅広い産業分野で使用される化学品を製造しています。同社は樹脂、合成繊維、化学薬品、電子材料などの製品を提供しており、農業関連製品や健康・環境に関連する製品も取り扱っています。化学を中心とした広い分野に事業を展開していることが特徴です。
企業の検索
企業の検索は検索窓左より、企業IPを選択してください。そして企業名を入れて検索します。すると、関連する企業が得られます。今回は「住友化学株式会社」と検索しました。
そして気になる企業をクリックします。
すると、「保有知的財産権リスト」や「出願特許産業分布」はもちろん、資本金や従業員数などの「法人情報」や売上高や純資産額などの「財務情報」を確認することが出来ます。
また、最新保有特許、意匠、商標も分かるため、企業の最近の動向を分析しやすくなります。
住友化学は意匠、商標の出願件数が少なく、特許出願件数が約3万件と非常に特許、研究開発に注力していることがわかります。
詳しい出願状況の分析
「特許分野別現況分析」から企業が保有する知的財産について様々な方法で分析することが出来ます。
やはり、企業名にもあるように化学分野に関連する特許の数が多くなっています。
また、右上より表・グラフの表示を変えることで、異なる見方をすることが出来ます。
この折れ線グラフは、年別で各分野の特許数の変化をみることが出来ます。
高分子化学、ポリマーの関連特許は2002年から2012年にかけて多く出願されていることがわかります。他の特許の出願傾向を見ても2000年代にかけて特許戦略に注力していたことがわかります。
また、近年は化学分野での研究に加えて光学の分野での研究が盛んであることがわかります。
特許の傾向から見えてくる企業の動向
先ほどの企業ページの「出願特許分布」より各分野の特許がどれほど出されているのか見ることが出来ます。また、特許分野別現況では緑色が濃いほど多くの特許を出されていることを意味します。
ここでは、化学分野の中でも出願件数の少ない医薬品についてみてみましょう。
医薬品を選択することで、これまでの医薬品分野での特許について絞り込むことが出来ます。
2010年代の医薬品の研究は主に「殺虫剤」「防虫剤」に関わるものが多いということがわかります。
「インキサゾリン化合物が高分子化合物に分散した組成物」というのは、内容を見てみると、動物の体表に寄生する、いわゆる外部寄生虫を防虫するためのものでした。
2000年代の研究の多くは人体に作用する医薬品の研究が盛んで、血糖値を下げたり動脈硬化を防いだりと、生活習慣に根差した病のための研究が進められていたことがわかります。
特許なので研究開発の成果を示しているわけですが、「医薬品」の特許を分析することで、生活習慣病の改善のための医薬研究から、害虫駆除のための医薬品の研究へも注力するようになったことがわかります。
最も新しく出願された「DPP-4阻害剤およびその製造方法。」についてみてみましょう。
具体的な特許の調査
発明の詳細説明より以下のような情報が得られます。
このタブからは「その特許が何のために発明されたもの」か「どのような社会課題に対してどのようなソリューションを提供するものか」といった情報をみることができます。
つまり、この会社がこの発明を何のために行い、何をしようとしているかという情報を見ることができます。
気になった特許があったらまずはここを見てみましょう。
要約をみてみると
『本発明は、ジペプチジルペプチダーゼ-IV(DPP-4)阻害剤およびその製造方法に関する。糖尿病による高血糖状態の合併症を防ぐため、血糖値を低下させる作用のあるDPP-4阻害剤が必要とされている。本発明では、微生物由来タンパク質をタンパク質分解酵素で加水分解し、DPP-4阻害剤を製造する方法が提案されている。微生物由来タンパク質は大量生産できるため、安価な製造方法となる可能性がある。』
と表示されています。
糖尿病による合併症を防ぐための人のための医薬品であることがわかります。
2010年代は「虫」に対する医薬品の研究が盛んであったが、最新の特許は「人」のための医薬品のため、住友化学は再び「人」のための医薬品の研究に注力していくという兆しかもしれません。
意外な特許の発見
先ほどの技術分野別特許現況を基にして、「住友化学」の電気工学分野でも特にコンピュータ技術についての特許を見ていきます。
右の各項目をクリックすることで円グラフの範囲から外し、項目を絞って円グラフを見ることが出来ます。
そして、円グラフの中から気になる分野をクリックして、その特許を絞り込んでみることが出来ます。
出願日の新しい特許から見ていくと、近年増加傾向にある「光学」に関するコンピュータ技術が多いことがわかります。今回は、最新の出願特許の「画像分類装置、画像分類方法及び画像分類モデルの生成方法」を見てみます。
要約してみると
「本発明は、機械学習を用いて植物の病害や害虫などの有害生物の画像を分類するための画像分類装置、方法、および画像分類モデルの生成方法に関するものです。従来の技術では画像の分類精度が低かったため、本発明では複数の分類器を使用し、画像データに基づいて判定スコアを算出することで高い分類精度を実現しています。この技術により、有害生物の画像分類がより正確に行えるようになります。」と表示されていました。
有害生物の画像の分類を行うという特許なわけですね。
電気工学分野でも、研究開発が進められているのは驚きですね。
そして、医薬品の特許との関連性を見つけることが出来ました。有害生物への対処のために多方面の分野から研究がなされていることがわかりました。
さらに、気になる特許を見つけた場合、右上の「お気に入り共有」から自社内で共有したり「お気に入りに登録」したり「メモ」を残したりできるので、後ほどの調査、分析にも便利です。
審査経過情報について:https://www.tokkyo.ai/wiki/introduction-to-ip-analysis/
まとめ
Tokkyo.Aiの分析機能を活用することで、自社の戦略を立てるうえで重要なヒントを得られるかもしれません。他社がどの分野に注力しているのか見ることが出来るので、経営戦略を立てる上では欠かせませんね。ぜひ特許情報を利用した知財戦略に挑戦してみてください。
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