現代の経営環境は不安定で変化が激しいため、企業は持続的な発展を達成するために知財戦略を策定・実行する必要があります。知財戦略は、イノベーション創出、事業競争力の強化、組織・基盤の強化等に貢献し、企業の競争力を強化し、持続的な成長を支えます。これらの戦略は、企業の経営戦略を成功に導く重要な要素となります。
今回は環境の変化と対応に関して検討が必要な項目を挙げ、以下にまとめました。
1. VUCA時代の経営環境とその対応
現代の経営環境はVUCA(Volatility, Uncertainty, Complexity, Ambiguity)と呼ばれ、不安定で変化が激しく、先が読めず不確実性が高いといわれています。このような環境下で企業が持続的な発展を達成するためには、経営戦略の策定と実行が重要となります。企業は、これらの変化に対応するために、経営戦略を見直し、新たな方向性を定める必要があります。
2. SDGsとESG投資への対応
2015年に国連で採択された持続可能な開発目標(SDGs)と、環境、社会、統治を重視した経営への投資であるESG投資への対応が求められています。
これらを企業経営に取り込むことが、企業の持続的な発展に向けて重要となっており、企業は、SDGsを経営戦略に組み込み、ESG投資を呼び込むための戦略を策定する必要があります。
SDGsは世界の共通言語となり、ESG投資はステークホルダーの重要な判断材料となっています。これらの取り組みは、企業の信頼を高め、グローバルな投資家からの高い評価を得る上で重要であり、企業の持続的発展のために避けては通れないものとなっています。
3. 知財戦略の役割の再認識
知財戦略戦略は、企業の競争力を強化し、持続的な成長を支えるための重要な要素となります。以下では4つの役割についてまとめています。
①イノベーション創出に貢献する知財戦略
イノベーション創出に貢献する知財戦略には、オープンイノベーションによる事業創出、プラットフォーム戦略の推進、ソリューションビジネスの事業創出などが含まれます。これらの戦略は、新規事業の創出、事業のエコシステムの創出、顧客の課題解決に向けたソリューションの創出などを通じて、企業のイノベーションと事業創出に貢献します。
②オープンイノベーションによる事業創出
オープンイノベーションによる事業創出は、近年の変化が激しい事業環境下で、従来のような社内だけの研究開発による新規事業の創出に限界を感じた企業が、競合企業、スタートアップ、大学等の技術等を自社に取り込むことを通じてイノベーションを起こし、事業を創出しようとするものです。
参考記事:『知って得する!オープンイノベーション成功事例 5選』
③プラットフォーム戦略の推進
プラットフォーム戦略の推進による事業創出とは、顧客などを同一の場所であるプラットフォームに乗せることで事業のエコシステムを創出するビジネスモデルである、「プラットフォーム戦略の推進」により事業を創出しようとするものです。
プラットフォーム戦略は、参加者を結びつけ、共有経済やネットワーク効果を生み出すことができます。すなわち、利用者と提供者、開発者、パートナー企業などのエコシステムを形成し、相乗効果を生み出します。このことから、プラットフォームは新たなビジネスチャンスを生み出す力を持っているといえます。
④ソリューションビジネスの事業創出
ソリューションビジネスとは、従来のモノ売りのビジネスから脱却し、顧客の課題を解決するコト売りのビジネスに進化すること、すなわちソリューションを創出するビジネスです。
ソリューションビジネスはビジネスモデルの変革という観点から労力はかかりますが、顧客価値向上や収益拡大といった観点において大きなメリットをもたらします。
従来は顧客の課題解決に知財部門が直接的に関わることは少なかったですが、近年は知財部門が積極的に関与し、新たなソリューションのコアを早期に特定し、これを適切に保護することで、ソリューションビジネスの事業創出に貢献しています。
参考記事:『特許情報からみえる新しいアイデア – 自社プロダクトの延長線上に何があるのか – サイボウズ株式会社 上池 睦 氏』
まとめ -知財戦略の重要性
以上のように、知財戦略は企業の経営戦略を成功に導く重要な要素となっています。VUCA時代の経営環境下で、企業が持続的な発展を達成するためには、知財戦略の策定と実行が不可欠です。また、SDGsとESG投資への対応、イノベーション創出に貢献する知財戦略など、企業の競争力を強化し、持続的な成長を支えるための戦略も重要となっています。これからの企業経営において、知財戦略の重要性はますます高まることでしょう。
まずは自分たちの技術領域に関係するキーワードを入力し、プレイヤーの把握や技術動向の把握をしてみてはいかがでしょうか。
参考記事:『無料で特許・意匠・商標が検索できる検索エンジン』
参考元:特許庁『経営戦略を成功に導く知財戦略』