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【入門編】特許の引用・被引用とは?何に使える?

知財部門に携わっている方や特許を経営戦略に活用したい経営者の方であれば、特許の引用・被引用を理解しておくことが重要です。

引用・被引用の意味や活用方法を理解しておけば、より戦略的に特許の活用が可能となります。

引用・被引用とは

ある特許出願Aの審査に関して、審査官が先行特許Bを引用した場合、先行特許Bは特許出願Aの「引用特許」と呼ばれます。一方で特許出願Aは先行特許Bの「被引用特許」と呼ばれます。

文字で書くとわかりにくいので、以下の図を見てください。

たとえば、自社が出願した特許(「現特許」)を中心に見たときに、以下のようになります。
※引用関係にある特許が何年に出願されたかを見ることで即座に現特許の「引用特許」か「被引用特許」かを見分けることができます。

※ページ中段にある「引用分析」のタブをクリックすると表示されます。

引用特許や被引用特許に関する情報を確認するには

特許検索エンジンTokkyo.Ai(当ページ上部の検索窓)から特許検索を行うことができます。個別の特許について「引用分析」から以下のように引用・被引用特許を確認することができます。

引用文献および被引用文献の活用方法

引用文献と被引用文献は、主に「重要な特許の把握」、「無効資料の調査」、「ライセンス先候補の選定」という3つの活用方法があります。この章では各方法について具体的に解説します。

重要な特許の把握

重要な特許とは、世間的に画期的な発明として認められている特許や、自社の事業に何かしらの利益をもたらす特許(≒価値のある特許)を意味します。

特許公報の被引用文献数が多い特許であるほど、より多くの特許出願に影響を与えていると言えます。したがって、被引用文献数を見れば重要な特許であるかどうかを判断できるのです。実際に、日本特許情報機構が公開しているデータでは、重要な特許であるほど、平均的な特許の被引用回数よりも多いことが分かっています。

ただし、出願公開から時間が立っている特許であるほど、後続の特許出願で引用される機会(被引用文献数)が増えます。一概に被引用文献数が多いからといって重要とは断言できないため、時間軸も考慮して重要な特許であるかどうかを判断しましょう

引用・被引用文献の活用方法に関しては、たとえば複数の特許を保有する企業の場合、各特許の被引用文献数を分析することで、自社にとって重要な特許とそうでないものを区別できます。あまり重要でない特許の維持を止めれば、自社の利益をあまり減らすことなく、特許の維持コストを削減できるでしょう。また、業界内において重要な特許を把握すれば、自社が注力すべき分野の把握や差別化の指針を打ち立てることが可能となります。

商用データベースを用いれば、各特許の情報を出力する際に被引用文献数も表示させることが可能です。そのため、短時間で容易に被引用文献数を把握できるでしょう。

無効資料の調査

引用・被引用の関係にある複数の特許公報は、似ている内容を示している可能性があります。

そのため、引用・被引用文献の情報を活用すれば、競合他社の特許などについて、その特許を無効化するための先行資料を探せます。

具体的には、対象となる特許の被引用文献の引用文献や、引用文献のさらなる引用文献などをたどる方法で調査を進めます。対象特許を取り巻く引用・被引用の関係を調査することで、洗顔の同一発明に関する資料などを発見できる可能性があります。

Fタームをはじめとした特許分類などを使わずに済むため、比較的簡単に無効資料を調査できるでしょう。

ライセンス先候補の選定

自社特許のライセンス先を探す際にも、引用・被引用の情報は非常に重宝します。

具体的には、自社特許を引用して拒絶された出願人を洗い出す方法を用います。自社特許を引用しているということは、自社が有する技術に高い関心を持っていたり、類似する技術を商用化したりしたいと考えている可能性が高いです。そのため、交渉によってライセンス契約を締結できる可能性が高いと考えられます。

要するに、「ライセンス費用を払ってでも技術を使いたい」という強いニーズを持つ企業をピンポイントかつ高い確率で洗い出せるのです。ライセンス契約を締結すれば、自社で製品の開発コストをかけずに、安定かつ長期的にマネタイズできるようになります。

攻めの知財戦略を検討しているならば、引用・被引用情報を用いたライセンス先候補の選定は積極的に活用したいところです。

まとめ

今回ご説明したとおり、引用文献や被引用文献の情報は、特許を戦略的に活用する上で非常に有用なものです。調査も決して難しくないため、特許に携わる方は積極的に活用してみてください。

参考:引用・被引用文献情報というデータがあるが、どのように活用すれば良いのだろうか。 特許庁