秘密特許とは?特許非公開制度についてわかりやすく解説

最近、ニュースなどで「秘密特許」という言葉を目にする機会が増えたかもしれません。
現在日本は、海外への技術流出を防止するための特許非公開(秘密特許)制度の導入についての検討を行っています。

今回は、秘密特許とは何か、なぜその制度が必要かということを踏まえて解説していきます。

秘密特許とは

秘密特許制度とは、国家の安全や優位性に関わる発明について、海外への技術流出を防止するため、秘密特許に該当する発明については通常の特許とは異なり公開をしないとする制度です。

正確にいうと、「機微な発明の特許出願について、出願を非公開とし、特許出願人等による当該発明の取扱いに対して流出防止の措置を講じ、もって、当該発明が外部からの脅威に利用されるのを未然に防ぐ制度」(引用:経済安全保障法制に関する有識者会議 特許非公開に関する検討会合 第一回資料 令和3年12月6日)です。

機微な発明とは、ひとことでいうと国家安全に関してセンシティブな発明のことになります。

これらが公開され、外国からも見ることができるようになってしまうと、国家の安全に関わる可能性が出てくるためです。

どういった特許をその対象とするかについては議論がされている最中で、2022年1月19 日開催の経済安全保障法制に関する有識者会議によると、「核兵器の開発につながる技術及 び武器のみに用いられるシングルユース技術のうち我が国の安全保障上極めて機微な発明を基本として選定するべき」としています(参考:「経済安全保障法制に関する 提言骨子 (特許出願の非公開化)」)。

なお、諸外国では、「秘密特許」についての取り決めが多く存在しており、G20諸国の中で、同様の制度がないのは日本、メキシコ及びアルゼンチンのみになります。

特許制度とは

秘密特許制度を理解するには、まず前提として特許制度を理解している必要があります。

特許制度について解説すると、特許は発明を公開する代償として、その発明に対し独占的な権利を与えるものです。通常であれば、特許を出願して18カ月で公開されます。

なぜ発明を公開するか

特許を取得する前に発明を公開する理由は、2つあります。

1つ目は、重複研究の排除です。もし同業他社が同じ研究をしていた場合、発明を公開するタイミングが遅いとその同業他社は発明をするために無駄な資金や労力を費やしたことになります。そういった無駄なコストの発生をおさえる趣旨で発明は一定期間後に公開されます。

2つ目は、産業の発達のためです。発明を早く公開することで、それを参考にし、より産業の発達のためになる発明がなされる可能性が上がります。

こういった理由から、発明は特許出願より18か月後に公開されます。

(画像引用:経済安全保障法制に関する有識者会議 特許非公開に関する検討会合 第一回資料 令和3年12月6日)

秘密特許についての具体例

制度の紹介をしてきましたが、具体的には以下のような場面で適用されることとなります。

たとえば、ある会社が海水を淡水化するための「ろ過器」を発明したとします。

しかし、その発明された「ろ過器」によって、物質の抽出ができてしまうことから細菌兵器に使えるような細菌が抽出できてしまう発明であったとします。

こういった技術を通常の特許と同じ扱いで公開をしてしまうと、インターネットを介してさまざまな国がその発明を使うことができるようになります。

そうすると、せっかくの自国の発明(ここだと、「ろ過器」)を戦争で使えるような形に転用され、それにより大量破壊兵器が誕生してしまうかもしれません。

こういった、公開されてしまうと国家の安全上問題となる軍事技術や国家機密に相当する機微情報を含む特許が出願された場合に、特許の審査を中断し、公開しないものとする制度です。 

(参考:経済安全保障法制に関する有識者会議 特許非公開に関する検討会合 第一回資料 令和3年12月6日https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/keizai_anzen_hosyohousei/dai2/siryou10.pdf

諸外国の状況

海外の秘密特許制度に目を向けてみると、国によって微妙な差異はありますが概ね「国家の安全を害する」ものや、「国家機密に関わる」「国防に関わる」といった内容のものになります。

秘密特許に該当した場合のルールも国によっていくつかのパターンがあり、「特許を付与しない」とするか、閲覧の制限された特別登録簿に登録されるといった対応がある。

(画像引用:経済安全保障法制に関する有識者会議 特許非公開に関する検討会合 第一回資料 令和3年12月6日)

まとめ

現在、秘密特許制度・特許の非公開化についてはさまざまな議論がなされています。

今後の日本にとって大きなテーマとなることは間違いありません。常に動向を確認するよう心掛けましょう。