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【知財×経営】IPランドスケープと知財のマネタイズとは(前半) 株式会社知財ランドスケープ 代表取締役CEO 山内 明

今回は、株式会社知財ランドスケープ 代表取締役CEO 山内 明 氏にお話を伺いました。
※こちらの記事は前半になります。

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略歴
1995年 ~ 2001 年 株式会社 SII (現セイコーインスツル)に勤務
2001年 ~ 2003 年 酒井国際特許事務所に勤務
2004年 ~ 2006 年 株式会社物産 IP に勤務(知財戦略室長)
2006年 ~ 2020 年 株式会社三井物産戦略研究所に勤務(知的財産室長)
2020年 6 月 株式会社知財ランドスケープ 代表取締役 CEO に就任
2020年 IAM Strategy 300 に選出される

対外活動
1.講座名
東京工業大学大学院 キャリアアップ MOT 知的財産戦略コース 「 IP ランドスケープ実践に役立つ知財情報戦略」(2012 年より毎年 6 月開催)
情報機構「IP ランドスケープ実践講座」(全 4 回、 2015 年より毎年 5 月以降開催)
AIPE認定「知的財産アナリスト講座(特許)」( 2011 年より毎年 2~3 回開催)

2.執筆活動例
JAPIO YEAR BOOK2019「 IP ランドスケープ 3.0 」( 2019 年 12 月)
JAPIO YEAR BOOK2018「 IP ランドスケープ 2.0 」( 2018 年 12 月)
JAPIO YEAR BOOK2017「 IP ランドスケープ実践に役立つ知財情報戦略」( 2017 年 12 月)
技術情報協会「 IP ランドスケープ実践事例集」( 2019 年、共著、監修)
日本経済新聞出版「 IP ランドスケープ経営戦略」( 2019 年、共著)
日経BP 社 「自動運転ビジネス 2017 」( 2016 年、共著)
日経BP 社 「知財情報戦略 自動運転編 」( 2016 年)
日経BP 社 「特許から考える失敗しない研究開発(連載第 4~6 回)」( 2012 年)

知財との出会い、現在の知財との関わり方

最初は新卒でメーカに入って開発職に就きました。入社した年に、いわゆる発明提案書を書いて弁理士の先生と面談して出願を行ったというのが知財との最初の出会いです。その後特許事務所に転職して、いわゆる特許技術者として特許出願の支援業務に従事していました。さらに転職し、企業知財部、具体的には総合商社系のナノテク研究所の知財管理・戦略会社のマネージャーを務めました。その後、親会社側に吸収される格好で、総合商社グループの知財戦略を14年ほど担いました。

もともと技術職としてキャリアをスタートし、当初からビジネスの現場に立ち会う機会を数多く得ました。お客様のところに開発品を持ち込み評価してもらい、時には怒られたり、徹夜でインストールしたり、色んな経験をしました。自分が開発したものが実際に動いてお客様の役に立つのを見るのは非常にやりがいのある仕事でした。

次に転職した特許事務所は技術職とは全く違う世界でした。特許事務所での仕事の多くがそうであるように、自席にはファイルが積まれ、基本的にはそこに書いてあることを元に自分の仕事を着実にこなすという、どちらかというとインドアな仕事でした。もちろん知財担当者に面談を申し入れてヒアリングすることもできますが、安易にヒアリングすると担当者の負担となることもあり、私はなるべく連絡せずに済ませることを美徳としていました。

このように、技術職時代はビジネスの現場でお客様と触れ合う機会が多かったのに対して、特許事務所時代は一人で黙々とやる仕事に代わりました。その間、論理的思考を徹底的に学び、その経験が今の私の血肉となっているのは間違いありません。
ただ、特許事務所で3年目を迎えた頃、またビジネスの現場に立ち会いたい、ビジネスの現場で力を発揮したいという想いが強くなりました。ただし、3年のブランクがあっては技術開発職には戻ることは困難ですし、そもそも手に職をつける狙いで知財の道を選んだので、企業知財部で技術開発職や事業企画職を支援する社内コンサルタントへの転身を決心しました。

実は、入社した総合商社系のナノテク関係会社の他に、もう一社から内定を頂いていました。
もう一社も魅力的な会社でしたが、ナノテク関係会社の社長からの「結果を出せば役員にする」という言葉に魅了され、こちらを選びました。結果論となりますが、今思えば私にとって正しい選択だったと思いますし、その選択をしたからこそ、今、こうしてインタビューを受けているのだと思います。

入社後、最初は色々ありましたが、親会社側に吸収され、総合商社系シンクタンクの一員となってからは、知財専門部署をゼロから立ち上げ多岐に亘る経験をしました。

近年では、IPランドスケープをテーマとした講演機会が増え、受講者との互教の精神で色々な案件に関わるようになり、より多くのクライアント様を本気で支援したいという想いが強くなり、今年6月にプロに転向し、小さいながらもコンサルティングファーム代表として充実した日々を過ごしています。

企業の知財担当者の役割とは

まずは、知財専門家として社内から頼られるコンサルタントであるべきだと思います。

従来、大手企業の知財部では、その役割の大半が膨大な特許出願・権利化の業務でしたが、近年、量から質にシフトしています。大胆にいえば、モノづくりからコトづくりにシフトしており、従来の特許出願・権利化とは大きく異なるスキルが求められています。
従って、社内コンサルタントとして活躍するためには、そうしたパラダイムシフトに順応し、自ら進化・改革していく必要があります

勿論、言うは易く行うは難しです。よく言われる話として、海外、例えばアメリカのシリコンバレーの知財専門家は、知財弁護士であると同時にビジネスパーソンであり、自らハイテク分野のスタートアップを起業する者も少なくないようです。

一方、日本では、歴史的にみて改良技術や改良商品によって国際競争を生き抜いた時代、これに伴い膨大な特許出願・権利化業務が大半であった時代が長かったことが災いし、知財専門家のビジネスマインドの醸成は進んでいません。

詳しくは後程お話しますが、IPランドスケープがブームとなっている今、実はその担い手にはビジネスマインドが求められており、その意味でも社内コンサルタントとして活躍するためには、自ら進化・改革していく必要があります

一番記憶に残っている仕事

何度か転職してきましたが、一番大きなジョブチェンジは、特許事務所から社内の知財コンサルタントへの転身です。

社内とはいっても、商社系で色んなことをやっているところだったので、対外活動も多かったです。
その一つとして、ロボットスーツのパイオニア企業の知財戦略をお手伝いしたことがあります。転職して直ぐの案件でしたので大変でしたが、技術職の経験と特許事務所での経験を結集して精一杯支援しました。
その後、当時の成果物が強力な特許ポートフォリオとして結実し、創業者が21世紀発明賞を受賞され、数年後には、IPOを果たして時の人となり、大変興奮しました。
大袈裟かもしれませんが自分の仕事の1ページが社会に貢献できたと心から思えた瞬間でしたので、一番記憶に残っています。

※後半では、山内氏に「IPランドスケープ」「知財のマネタイズ」という観点からお話を伺いました。

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