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知的財産権を侵害したら、されてしまったら?

今回の記事では、知的財産権を侵害された場合の対応策と、反対に侵害してしまった場合の対応策について、それぞれ分かりやすく解説します。

知的財産権を侵害された場合の対応策

知的財産を侵害された場合、主に下記6つの対応策のいずれかを実施します。

まずは警告するのが一般的

知的財産権が侵害された場合、まずは侵害行為を停止する(製品販売の中止など)ように、書面で相手方に警告するのが一般的です。このとき、警告を相手方に確実に送付したことを証明するために、「内容証明郵便」を活用するのが重要です。

たいていのケースでは、和解して販売をやめてもらったり、ライセンス契約に切り替えたりすることになります。相手方が交渉や要求に応じない場合は、下記以降で紹介する対応策を検討します。

差止請求

次に検討すべきは、差止請求です。差止請求とは、相手方に知的財産権の侵害を止めるように、法的な手段を用いて請求することです。

裁判所が権利を侵害する相手に侵害を止めるよう命じるため、警告と比べると知的財産権の侵害をやめてもらえる可能性は非常に高いです。また、民事訴訟よりも費用を安く抑えられる点もメリットです。

損害賠償請求

知的財産権の侵害が相手方の故意や過失によって行われ、かつその行為により損害が生じた場合には、民法第709条に規定された損害賠償の請求を行えます。

差止請求と比べた場合、損失を補填できる点が最大のメリットと言えます。ただし、訴訟を起こすために高額な費用がかかる上に、解決するまでに比較的長い時間を要します

参考:民法第709条 e-Gov

不当利得返還請求

知的財産権の侵害により相手方が利益(不当利得)を得た場合、相手方が獲得した不当利得を返還するように請求できます。簡単に言うと、本来得られるはずであった利益を返してもらう権利です。

損害賠償請求とは違い、相手方の故意や過失を要件としないため、比較的活用しやすい対処法です。また、請求できる期間も10年と長い(損害賠償請求は3年)ため、損害賠償請求を行えない場合でも活用可能です。

信用回復措置請求

知的財産権の中でも、特に特許権を侵害された場合には「信用回復措置請求」も活用可能です。

信用回復措置請求とは、相手方による特許権侵害により業務上の信用を害された場合に、新聞への謝罪広告の掲載などにより、信用を回復するように求めることです。あまり特許権侵害により自社の信用が下がるケースはないものの、念のため覚えておいて損はないでしょう。

参考:特許法第106条 e-Gov

刑事告訴

特許権や著作権を侵害された際には、相手方を刑事告訴する選択肢も検討できます。具体的には、10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金刑が科されることとなります。

ただし特許権侵害の場合は「故意」であることが要件となるため、実際に刑事罰が下されるケースはまれです。また、著作権侵害で刑事告訴するには、著作権法第119条〜124条の要件に該当する必要があります。要件が複雑であるため、刑事告訴にあたっては専門家に相談する必要があるでしょう。

知的財産権を侵害した場合の対応策

一方で知的財産権を侵害し、相手方から警告を受けた場合は、主に下記2つの対応策が役に立ちます。

正確な調査と回答

まず行うべき対応策は、相手方の知的財産権の範囲を調査し、実際に権利を侵害しているかを見極めることです。具体的な調査方法としては、「特許情報プラットフォーム」などの検索ツールを使うケースや、専門家(弁理士など)に相談、特許庁に判定してもらうなどの方法があります。

調査の結果、知的財産権を侵害していないと判断したら、その旨を内容証明郵便などにより書面で回答すると良いでしょう。反対に侵害していた場合は、後述する「先使用権」を検討するか、相手方の要求に応える必要があります。

先使用権の主張の検討

他の第三者が自社と類似する特許や意匠を持っていることを知らない場合、先使用権を主張できる可能性があります。先使用権が認められれば、引き続きその知的財産権をビジネスで利用できます。

知的財産権の種類によって若干異なるものの、基本的には下記の要件を満たせば先使用権が認められます。

  • 第三者の知的財産権の内容を知らないで、みずから同様の知的財産を発明している
  • 他社が知的財産権に関する出願を行った時点で、すでに日本国内でその知的財産権を使った事業をしている、もしくは事業を始める準備をしている

ただし商標権の場合は、上記要件に加えて自社が用いている商標権が、広く知られていることも要件となります。

まとめ

知的財産権の侵害には、故意でなくても突然巻き込まれる可能性はあります。自身が侵害するにしろ、反対に侵害されるにしろ、対応策をあらかじめ知っておくことが重要です。

ご自身や経営する会社の利益を損なわないためにも、今回お伝えした対処法は頭の片隅にでも入れていただければと思います。