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特許取得の要件とは?

特許法はズバリ以下の5つの要件を満たすものに特許権という独占的な権利を与えると規定しています。

<特許取得のための要件>

①産業上利用可能性のある発明であること

②新規性を有すること

③進歩性を有すること

④先願であること

⑤公序良俗に反しないこと

では、いかなる場合にこれを満たすか。見ていきましょう。

特許権が付与される発明とは?

特許法は、第29条で「産業上利用することができる発明をした者は、次に掲げる発明を除き、 その発明について特許を受けることができる」と規定しています。
これを読んだだけでは何を言っているのかわからないと思うので、細かく切り分けて解説していきます。

<この2つの視点を持とう!>
・「産業上利用することができる発明」とは?
・「次に掲げる発明を除き」とは?

「発明」とは?

当たり前ですが、「産業上利用することができる」ものかを考える前に、まずはなにが「発明」にあたるのかを知らないといけません。

<ポイント>
ポイントは「権利を与える発明が、特許法による保護にふさわしいか」という視点です。

特許法では発明を「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの(2条1項)」と定義しています。

この定義は長くて分かりにくいので、それぞれについて細かく見てみましょう。

1.「自然法則を利用した」

特許の目的は技術の保護と当業者への技術の普及です。したがって、特許の対象を、自然法則を利用した再現可能な技術に限定するためこのような制限がついています。

例えば永久機関のように自然法則に反しており再現が不可能なものや、万有引力のように自然法則そのものは特許の対象となる「発明」に含まれません。

2.「技術的思想」

特許を付与する発明の対象を、個人の素質に依存する「技能」(「フォークボールの投げ方」など)ではなく、特許を見た人に客観的に伝達が可能である「技術」に限定するための要件です。

3.「創作」

鉱物の発見などのように創出作業を伴わない「単なる発見」に特許を付与しないための要件です。

4.「高度のもの」

実用新案権と区別するための要件です。具体的にこの要件が問題となることはほとんどありません。

「産業上利用することができる」とは?

「発明」が何かわかったところで、それが産業上利用できるものかというのを検討しましょう。

<ポイント>
ここでもやはり、ポイントは「権利を与える発明が、特許法による保護にふさわしいか」という視点です。

特許は産業で利用されるべき技術について付与される権利ですから、例えば「地球全体を覆う温暖化防止フィルム」などの到底実現できない発明は、「発明」に含まれないものとされます。

また、手術、治療、診断などの技術も例外的に産業上の利用可能性がないものとされます。これらの技術が特許化されてしまうと、医師が「自分の治療は特許に触れないだろうか」と医療行為をためらってしまうおそれがあるからです。

新規性が認められること(「次に掲げる発明を除き」とは? 」)

誰もが知っている技術を特許化してしまうと、日常の技術使用が困難になってしまいます。そこで、特許の対象となる発明は、世間に知られていない、すなわち「新規性」を有するものに限られています。

では、何をもって「世間に知られていない」というのでしょうか。特許法は逆に「世間に知られた」と扱われてしまう3つのパターンを定めています。

<ポイント>
特許法29条1項では、以下3つを掲げて、「これらを除く」と記載しています。
ここでは、既に知られているものについて特許権を認めないとしていますので、「新規性」についての要件といわれています。

1.「特許出願前に日本国内又は外国において公然知られた発明」

テレビで発明を放映した場合などをいいます。

2.「特許出願前に日本国内又は外国において公然実施をされた発明」

工場見学などで製造過程が見られる状態になっていたことをいいます。

3.「特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた発明」

雑誌や論文、インターネットで公開されたことをいいます。

これら3つの事由に該当してしまうと、例外的な場合(特許法30条)を除いて特許出願が認められません。つまり、これら3つのいずれにもあたらなければ新規性が認められます。

進歩性が認められること

特許を受けるには、既存の技術から容易に発明をすることができない、すなわち「進歩性」があることが必要です(第29条2項)。

「容易」といえるかは、当業者(対象特許の業種と同じ業種の人)を基準に判断されます。

先願であること

特許は同一の発明が複数出願された場合、出願の時期が早い方のみを特許として認めます(これを「先願主義」といいます)。その裏返しとして、自らの発明が先願であることが特許の要件となります。

公序良俗に反しないこと

これらのほか、「公文書を改ざんするための器具」のように公序良俗に反する用途しかない発明は当然特許権の対象とはなりません。

まとめ

改めて、特許取得のための要件は以下の5つになります。

<特許取得のための要件>

①産業上利用可能性のある発明であること

②新規性を有すること

③進歩性を有すること

④先願であること

⑤公序良俗に反しないこと

これらの要件をしっかりとおさえて、どいうったものに特許が認められるかを知りましょう。