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【徹底解説】ビジネスモデル特許とは?具体例やメリット、要件などを解説

ビジネスモデル特許は近年その注目度が高まっており、「いきなり!ステーキ」の量り売りシステムやAmazonのワンクリック特許などが例に挙げられます。

この記事では、ビジネスモデル特許とは何か、その事例や要件、メリットなどについて解説します。また、似た用語である「ビジネス関連発明」との関係も明らかにします。

ビジネスモデル特許とは?

ビジネスモデル特許(Business Method Patent)とは、あるビジネスモデルの実施における技術的な工夫についての特許をいいます。法律上の用語ではなく、主にコンピュータ・システムやインターネットを利用してビジネスの方法を実現する発明などの特許を指す、と考えられています。

ビジネスモデル自体は特許にならず、あくまでもビジネス方法やそれに取り入れられるコンピュータ・ソフトウェアの発明などが特許の対象となります。

ビジネスモデル特許を取得すると、20年間その権利が有効となり、他の者が特許発明を実施することができなくなります。

<ビジネス関連発明とは?>

ビジネス関連発明とは、ICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)を利用してビジネス方法を実現する発明であり、ソフトウェア関連開発の一類型として捉えられる場合が多いといわれます。

つまり、ビジネス関連発明が規定の要件を満たし、特許として登録されたものがビジネスモデル特許と呼ばれると考えてよいでしょう。

特許庁ホームページ「ビジネス関連発明の最近の動向について」より引用

ビジネスモデル特許のメリット

ビジネスモデル特許の取得にはどのようなメリットがあるのでしょうか。

競業他社に対する優位性

ビジネスモデル特許を取得すれば、その技術・方法によるビジネスモデルを他社が実践することができなくなるため、自社にしかないサービスや商品の強みを活かすことができます。つまり、特許として登録されたビジネスモデルを独占し、他社と差別化することができます。

顧客・投資家へのアピール

「特許を取得している」と示すことで、そのビジネスモデルや関連する技術が独自性を有し、優れているという印象を与えることができます。

そのため、顧客に対してビジネスモデルの利用を促したり、投資家に対してビジネスモデルの将来性などを訴えたりできると考えられます。

ビジネスモデル特許の具体例

具体的にどのようなビジネスモデル特許が存在するか、その事例を紹介します。

いきなり!ステーキのステーキ提供システム

「いきなり!ステーキ」では、テーブルに案内された客が、テーブル備え付けの番号札を持参してカット場へ行き、希望のグラム数を注文します。カットは専用の計量機を用いて行われ、カットした肉がどの客が注文したのかが判別できるように、テーブル番号を印字したシールをつけた状態で調理し、提供されます。

2016年6月10日、「いきなり!ステーキ」を運営するペッパーフードサービス株式会社は、上記提供システムにつき特許を取得しました。

2017年11月に「特許法上の発明に当たらない」として異議申立により取消決定がなされたものの、2018年10月に知財高裁が取消決定を取り消す判決を出し、有効となりました。

Amazonのワンクリック特許

AmazonのECサイトでは、2回目以降の購入の場合、「今すぐ購入」と書かれた購入ボタンをクリックすることで、住所や支払方法などを入力することなくワンクリックで注文・決済が完了します。

1999年に米国でAmazon.comが上記システムに関する特許を取得した後、日本においても2012年に特許として登録されました。なお、日本でのこの特許は2018年9月14日にその期間が満了しています。

TSUTAYAのレンタル商品返却システム

CDやDVDレンタル大手のTUTAYAでは、ユーザーが直接店頭に行かずとも、ポストに投函して商品を返却することができます。つまり、レンタルした本人ではなく、配送業者が投函された商品をTSUTAYAに届けるというシステムです。

TSUTAYAを運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社は、この返却システムにつき特許出願をし、2011年11月に登録されました。

このシステムは、レンタル商品の返却について、発送者を通じて返却期限の管理や商品の追跡ができるという利点があります。

ウェブ閲覧におけるエリアターゲティング

同一のURLであれば、どの端末であっても同様の情報が表示されるのが通常ですが、天気や広告などについては、閲覧する地域に対応した情報を表示することが望ましい場合があります。

ユーザーが使用する端末のIPアドレスからアクセスポイントが属する地域を判別し、その地域に対応したウェブ情報を表示するというシステムについて、株式会社ジェイ・キャストは2001年11月22日に特許を取得しました。

具体的には、IPアドレスと地域が対応したデータベースを用いて、ユーザー端末のアクセスポイントを判別し、その地域に対応したウェブ情報を端末に送信するというものです。

ビジネスモデル特許取得の要件

上で述べたとおり、「ビジネスモデル特許」という法律上の規定は存在しないため、通常の特許と同様の要件を満たす必要があります。

そもそも特許が認められるには、特許法上の「発明」(2条1項、29条1項柱書)に該当し、産業上の利用可能性があり、新規性、進歩性を有し、先願であることが必要です。また、公序良俗を害する場合は特許として認められません。

特にビジネスモデル特許では、発明該当性が問題になるといわれ、特許庁は「特許・実用新案審査ハンドブック」において、詳細な基準などを公表しています。

Tokkyo.Aiの特許検索・分析ツール

具体例で紹介した特許情報の詳細は、Tokkyo.Aiの検索エンジンを用いたものです。

Tokkyo.Aiは、無料で特許や意匠などの知財検索ができるほか、ワンクリックで引用関係の分析やパテントマップの作成など知財分析が可能です。ご関心をお持ちの方は是非こちらをご覧ください。

まとめ

・ビジネスモデル特許とは、あるビジネスモデルの実施における技術的な工夫についての特許を指します。

・ビジネスモデル特許は法律上の用語ではなく、通常の特許と同様、20年間他の者が特許発明を実施することができなくなります。

・ビジネスモデル特許は、そのビジネスモデルを独占し他社との差別化を図れるほか、独自性などを顧客や投資家にアピールすることができます。

・ビジネスモデル特許が登録されるには、通常の特許と同様の要件を満たす必要があります。