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「その商標似ていないか」類似商標の判断方法とは

類似商標とは、同一もしくは似ている商品・サービスに用いた場合に、購入者が出所を混同するほど、既存の登録商標と似ている商標を指します。
類似商標であると特許庁に認定された場合には、その商標は登録できません。類似商標であるかどうかを判断する際には、「外観」、「観念」、「称呼」という3つの要素、および「取引の実情」を含めて総合的に勘案されます。

今回の記事では、類似商標の判断方法について具体的に解説します。

外観の類否

外観とは、商標に接する利用者が視覚を通じて認識する見た目のことを意味します。2つ以上の商標の間で、文字・図形・記号などの外観が似ている場合には類似商標と判断されます。

外観が類似する具体的なケース

外観から類似商標であると判断されるケースとしては、具体的に以下が挙げられます。

  • スペルの大文字と小文字が異なるだけの商標(「Japax」と「JapaX」)
  • 使われているカタカナが類似している商標(「ライオン」と「テイオン」)
  • 色だけが異なる記号の商標

外観が類似しない具体的なケース

一方で下記のケースでは、外観が類似しないと判断されます。

  • 同種の動物のイラストが使われているものの、全体として異なる印象を受ける商標
  • 同じアルファベットで構成されているものの、フォントや色が異なる商標

つまり、用いられている文字や動植物の種類などが同じでも、見た目が異なれば類似商標とならないわけです。

観念の類否

観念とは、商標に接する利用者が取引に際して自然に想起する意味・意味合いを意味します。2つ以上の商標の間で、色合いや文字から感じとる意味合いが似ていれば類似商標となります。

観念が類似する具体的なケース

ある商標に用いられている用語と同じ意味を持つと認識されている言葉を用いると、見た目が違っても類似商標と判断されます。具体的には下記のケースが該当します。

  • 「でんでんむし」と「かたつむり」
  • 「キング」と「王」
  • 「子ふぐ」と「ふぐの子」

観念が類似しない具体的なケース

一方で以下のようなケースでは、観念が似ていないことから類似商標と判断されません。

  • 「虫という漢字の商標」と「てんとう虫のイラストから成る商標」
  • 「earth」と「terre」

1つ目は、てんとう虫のイラストは虫ではなく「てんとう虫」として認識されるため、類似していないという判断に至ります。一方で2つ目は、どちらも地球という意味を表す用語ではあるものの、日本人にとって「terre」というフランス語から地球という観念は想起しにくいため、類似商標とは判断されません。

称呼の類否

称呼とは、商標に接する利用者が取引に際して自然に認識する音を指します。2つ以上の商標について、呼び名が紛らわしい場合には類似商標と認定されます。

称呼が類似する具体的なケース

主に下記のケースでは、称呼が類似している商標であると判断されます。

  • 音質が類似している(「セレニティ」と「セレリティ」)
  • 相違する1音が長音・促音の有無または長音と促音、長音と弱音の差にすぎない(「コロネート」と「コロネット」、「タカラハト」 と「タカラート」)
  • 単語の切れ方や分かれ方に共通性がある(「バーコラルジャックス」 と「バーコラルデックス」)

称呼が類似しない具体的なケース

一方で以下に挙げたケースでは、称呼が似ていないため類似商標とは判断されません。

  • 語頭の音に音質や音調上著しい差異がある
  • 単語の切れ方や分かれ方に明確な差異がある

類似商標の判断にあたっては「取引の実情」も考慮される

類似商標の判断に際しては、上記3つの要素と併せて「取引の実情」も考慮されます。

取引の実情に関する考え方

類似商標の判断では、商品の取引方法や需要者層、商標の周知性、商標の使用状況など、ビジネス上の取引に関係するさまざまな事情も考慮されて最終的な決定が行われます。

つまり3つの要素を満たしていなくても、取引の観点から類似すると判断されれば類似商標となるわけです。逆のケースも同様であり、3つの要素を満たしていても、取引の観点から類似していないと判断されれば、類似商標とならない可能性が考えられます。

取引の実情を考慮して商標の類否が判断された事例

取引の実情が考慮された事例としては、日経ギフト事件が有名です。この事件では登録商標の「ギフト」と雑誌の題号である「日経ギフト」の類似性が争われました。

名称だけを見ると、「外観」と「観念」、「称呼」という3つの要素がすべて類似しています。ですが本件では、「日経」という単語が日本経済新聞の略称として周知されていることや、「日経〇〇」という題名の雑誌がたくさん出版されていることが取引の事情として考慮されました。

そのため、商品の出所について混同のおそれが生じないと判断され、登録商標との類似性が否定される結果となりました。

まとめ

外観、観念、称呼のいずれかの要件を満たすと、類似商標と認定されて登録ができなくなります。また、取引の実情の観点から類似商標と認定される可能性もあります。

ご説明してきたように、類似商標の判断方法は複雑です。不安に感じる方は、必ず知的財産の専門家(弁理士)に相談するようにしましょう。

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参考:商標法第4条第1項第11号の審査 特許庁