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外国語でも特許出願ができる、外国語書面出願制度とは?

特許を出願する際の言語について考えたことはありますか?

おそらく、普段から日本語でさまざまな手続きを行っている方は日本の特許庁に特許出願をするのだから当然に日本語で出願を行うものと思うかもしれません。

実は、日本の特許庁に特許出願を行う場合であっても、外国語書面による出願が認められています。

今回は外国語書面出願制度について解説していきます。

外国語書面出願とは

外国語書面出願制度とは、特許を受けようとする出願人が明細書、特許請求の範囲、明細書等及び要約書に代えて、経済産業省令で定める外国語で記載した外国語書面及び外国語要約書面を願書に添付して出願することができる制度です(特許法第36条の2第1項)。

※願書は日本語で記載する必要があります。

制度の趣旨

その趣旨は、期間的な制約や翻訳の際に生じる誤訳について、出願方法を多様化することで発明の適切な保護を図るためです。

特許庁がガイドラインにて以下のとおり説明をしています。

日本語による出願しか認められないものとすると、パリ条約による優先権の主張ができる期間が満了する直前に特許出願をせざるを得ない場合は、短期間に翻訳文を作成する必要が生じる。

また、願書に最初に添付した明細書等に記載されていない事項を補正により追加することは認められないため、第一国出願を日本語に翻訳して特許出願した場合は、外国語を日本語に翻訳する過程で誤訳があったと きに外国語による記載内容をもとにその誤訳を訂正することができないなど、発明の適切な保護が図れない場合がある。

(引用元:https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/guideline/patent/tukujitu_kijun/document/index/07_0100.pdf

外国語書面出願を行う際の注意点

外国語書面出願を行う場合には、いくつか注意点があります。

まずは、期間についてです。

特許出願の日より1年4ヶ月以内に「翻訳文」を提出する必要があります。

※特許の分割出願を行う場合や、出願の変更、実用新案登録に基づく特許出願を行った場合は、その日から2ヶ月以内に限って外国語書面、外国語要約書面、翻訳文を提出することができます。

もし翻訳文を提出しなかった場合は、その出願は取下げられたものとみなされます。

※なお、外国語要約書面の提出がなかった場合は補正命令がなされます。また、図面についての翻訳文の提出がなされなかった場合は、図面はないものとして取り扱われます。

このことから、必ず翻訳文を提出する必要があります。

ただ、指定された期間内に翻訳文を提出できなかったことにつき「正当な理由」がある場合は、その理由がなくなった日から2ヶ月以内で、1年4ヶ月の期間経過後1年以内に翻訳文を特許庁に提出する場合は、その提出を認めるとする救済制度もあります。

まとめ

外国語出願制度を駆使することは、日本に特許出願をしようと考えている外国語を母国語とする方。たとえば、日本企業に勤める文化圏の異なる、外国語を母国語とする研究者といった方などにおいても出願がし易くなる制度です。企業は、イノベーションを創出するため文化圏の異なる人材特有の視点というものも採り入れやすくなるのではないでしょうか。

参考:特許法 第36条の2

第三十六条の二 特許を受けようとする者は、前条第二項の明細書、特許請求の範囲、必要な図面及び要約書に代えて、同条第三項から第六項までの規定により明細書又は特許請求の範囲に記載すべきものとされる事項を経済産業省令で定める外国語で記載した書面及び必要な図面でこれに含まれる説明をその外国語で記載したもの(以下「外国語書面」という。)並びに同条第七項の規定により要約書に記載すべきものとされる事項をその外国語で記載した書面(以下「外国語要約書面」という。)を願書に添付することができる。

2 前項の規定により外国語書面及び外国語要約書面を願書に添付した特許出願(以下「外国語書面出願」という。)の出願人は、その特許出願の日・・・(中略)・・・から一年四月以内に外国語書面及び外国語要約書面の日本語による翻訳文を、特許庁長官に提出しなければならない。ただし、当該外国語書面出願が第四十四条第一項の規定による特許出願の分割に係る新たな特許出願、第四十六条第一項若しくは第二項の規定による出願の変更に係る特許出願又は第四十六条の二第一項の規定による実用新案登録に基づく特許出願である場合にあつては、本文の期間の経過後であつても、その特許出願の分割、出願の変更又は実用新案登録に基づく特許出願の日から二月以内に限り、外国語書面及び外国語要約書面の日本語による翻訳文を提出することができる。

3 特許庁長官は、前項本文に規定する期間(同項ただし書の規定により外国語書面及び外国語要約書面の翻訳文を提出することができるときは、同項ただし書に規定する期間。以下この条において同じ。)内に同項に規定する外国語書面及び外国語要約書面の翻訳文の提出がなかつたときは、外国語書面出願の出願人に対し、その旨を通知しなければならない。

4 前項の規定による通知を受けた者は、経済産業省令で定める期間内に限り、第二項に規定する外国語書面及び外国語要約書面の翻訳文を特許庁長官に提出することができる。

5 前項に規定する期間内に外国語書面(図面を除く。)の第二項に規定する翻訳文の提出がなかつたときは、その特許出願は、同項本文に規定する期間の経過の時に取り下げられたものとみなす。

6 前項の規定により取り下げられたものとみなされた特許出願の出願人は、第四項に規定する期間内に当該翻訳文を提出することができなかつたことについて正当な理由があるときは、経済産業省令で定める期間内に限り、第二項に規定する外国語書面及び外国語要約書面の翻訳文を特許庁長官に提出することができる。

7 第四項又は前項の規定により提出された翻訳文は、第二項本文に規定する期間が満了する時に特許庁長官に提出されたものとみなす。

8 第二項に規定する外国語書面の翻訳文は前条第二項の規定により願書に添付して提出した明細書、特許請求の範囲及び図面と、第二項に規定する外国語要約書面の翻訳文は同条第二項の規定により願書に添付して提出した要約書とみなす。