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特許分析とコンサルティング‐分析効果の最大化‐ 株式会社イーパテント 代表取締役社長/知財情報コンサルタント® 野崎篤志 氏

職歴
慶応義塾大学院総合デザイン工学専攻修了後、日本技術貿易株式会社(現在NGB株式会社)入社。
IP総研コンサルティングソリューショングループのマネージャーを経て、外資系特許調査・分析企業であるランドンIP日本オフィス立ち上げ時に参画し、シニアディレクター(日本事業統括部長)として各種リサーチ&コンサルティング案件のリードだけではなく、顧客開拓・マネジメント全般を統括し、ランドンIPの日本マーケットにおけるポジションを確立。
2017年5月に「知財情報を組織の力に®」をモットーに知財情報コンサルティングのブティックファームを目指して株式会社イーパテントを設立し、代表取締役社長に就任。

活動実績
● 自動車・エネルギーおよびヘルスケア分野を中心に、技術動向分析、競合他社分析、知財デューデリジェンス、新事業・新製品開発および新規用途探索・アイデア創出などの知財情報分析およびコンサルティング業務
● 特許庁JPO-IPR研修(途上国人材育成研修)、北海道経済産業局、発明推進協会、大阪発明協会、日本弁理士会や海外(中国、タイ、フィリピン)において知財情報調査・分析およびパテントマップ活用方法に関する多数の研修・セミナー講師
● 平成22年度 独立行政法人工業所有権情報・研修館「知財情報の有効活用のための効果的な分析方法に関する調査研究委員会」委員
● 令和元年度~2年度 特許庁「中小企業等知財分析レポートを用いたマッチング調査研究に関する調査研究」委員
● 東京理科大学大学院 イノベーション研究科 知的財産戦略専攻非常勤講師(平成26年4月~平成30年3月)
● 情報科学技術協会主催、科学技術振興機構共催の3i研究会・研究アドバイザー(平成27年8月~平成31年3月)
● K.I.T.虎ノ門大学院 イノベーションマネジメント研究科 客員准教授(平成29年4月~)
● 大阪工業大学院知財専門職大学院 客員教授(令和3年4月~)
● 平成30年度特許情報普及活動功労者表彰・特許庁長官賞【活用普及功労者】受賞
● 第44回(2019年)「情報科学技術協会賞」情報業務功労賞受賞

著作
● 『調べるチカラ 「情報洪水」を泳ぎ切る技術』(日本経済新聞出版社)
● 『特許情報分析とパテントマップ作成入門 改訂版』(発明推進協会)
● 『特許情報調査と検索テクニック入門 改訂版』(発明推進協会)
● 『欧州特許の調べ方』(共著、情報科学技術協会)
● その他日本弁理士会パテント誌、日刊工業新聞や@IT MONOistなどへ論文・寄稿多数
● YouTube「野崎篤志のイーパテントチャンネル-調査・分析系中心-」、noteややメールマガジンJ-PlatPatを使った【特許検索のコツ】など複数の情報発信メディアを運営。

今回は、株式会社イーパテント 代表取締役社長 野崎篤志 氏にお話を伺いました。

「調査・分析」がやりたくて、気が付いたら知財業界の入口にいた

もともと知財業界に就職するつもりはなく、調査や分析が好きなこともありシンクタンクやコンサルティングファームを中心に就職活動をしていました。

就活の冊子を見ているとたまたま日本技術貿易(現NGB)が「その他コンサル」という分類で紹介されており、調査・分析ができそうだったので、エントリーし、採用されました。

調査をするのは研究室時代から好きで、図書館にこもって熱流体力学分野における自分の研究テーマの先行文献の調査をして自分でレビューをしてホームページに載せたりということをやっていました。

学生時代に特許という分野で何かやっていたかというと、慶應義塾大学の大学院時代に凸版印刷の元専務取締役の石田先生の技術契約論というライセンス契約書をつくる授業をとっていたというくらいでした。

現在の業務は「分析とコンサルティング」

昔は先行技術調査とか無効資料調査、クリアランス調査なんかもやっていましたが、4年前に独立してからは分析とコンサルティングにサービスを絞っています。

分析は技術動向分析や競合他社分析だったり、新規用途探索や新規事業開発戦略のサポートなどもありますし、時折M&Aの知財デューデリジェンスもやっています。

コンサルティングプロジェクトのご依頼内容はなんでもありで、たとえばお客様企業のための特許分析のワークフローを設計したり、お客様の調査分析チームの課題・将来ビジョンを、その会社の若手を集めてファシリテーションして、今後の戦略に活かすというようなこともサポートしています。

最近だとIPランドスケープという言葉が知財業界に浸透してきたためか、「社内で分析人材を育成したい」というお客様の声も多く、社内の担当者の分析スキルを身に着けるためのアドバイス・分析サポートをOJTコンサルティングという形で行うこともあります。

自分は別に特許そのものが好きというわけではなく情報が好きなのと、調査よりも分析が好きなので、2017年の独立起業時に先行技術調査、無効資料調査、侵害防止調査などの調査系はやらないことに決めました。スマートワークスの酒井美里さんに調査ではかなわないと感じたのも理由の1つです(笑)

あとは、自分の得意分野である分析・コンサルティングで差別化しようと考えたためです。

自分の業務スタンスとしては、知財はあくまでもビジネスを円滑に進めるためのツールであるということを常に頭に置いて業務を行っています。

最近では従来のアウトソーシング的な分析プロジェクトから、先ほど述べたようにOJTスタイルでクライアントのプロジェクトチームと一緒に新規事業開発などを行う案件の方が増えています。

そういうケースでは、最終的なアウトプットとしてはお客様ご自身が分析報告書を完成させることになります。お客様のご要望次第で、その報告会に同席するということもあります。

これまでで1番記憶に残った仕事

いままで一番記憶に残っている仕事はNGBに入社して1年目後半から手掛けた分析プロジェクトです。

2002年末ころに、先輩が忙しかったこともあり、期間としては半年ちょっとかかるような大規模な分析を私が担当することになり、技術動向分析結果を基に研究開発の方向性の予測などを行いました。

このプロジェクトをきっかけに分析中心の業務にシフトしていったと同時に、クライアントの要望に合わせた独自の分析方法を創出することの楽しさに気が付きました。

ちなみに当時はエクセルが得意ではなくフィルター機能でカウントしていました。いろいろな統計分析マップを作成するために2晩ほど徹夜したのも今となっては良い思い出です(笑)。

企業は情報収集・分析をしたうえで、意思決定を

そもそもですが、日本の企業は情報をあまり調べずに意思決定している企業が多いように感じます。あるいは調べたとしても組織的に活用できていないという印象がありますね。

これは知財に限らないことですが、さまざまな情報を収集・分析したうえで意思決定をすることが重要であると考えます。

もちろんいろいろと調べて意思決定してもうまくいかないケースはありますが、調べないよりは成功確率は上がるのではないでしょうか。なので、ちゃんと情報収集・分析しましょうということをいつも強調しています。

特許情報はリッチ

たとえば新規事業開発の戦略を立案するにあたってマーケット情報や財務情報なども重要ですが、特許などの知財情報は法律的な情報だけでなくテクノロジーや企業の資源配分を示す情報でもあるので、非常にリッチな情報と考えています。

リッチな情報であるのにもかかわらず、それらの情報をちゃんと調べずに戦略立案するのは、自動車保険に加入せずに自動車を運転するのと同じようなものではないでしょうか。

もちろん、調べるだけでなく自社の発明をしっかりと特許出願して保護したり、ノウハウとして秘匿化することも同様に重要です。

特許情報を簡単にキーワードだけで検索できる仕組みがあればいい

知財情報はグローバルで書誌的事項が統一されている構造化データなので非常に便利ですが、Google検索のようにキーワードで簡単に所望の情報がヒットしない点があまり活用されていない理由にあると考えています。特許分類などを初心者の方が使いこなすのも大変ですしね。

最近はAI系ツールも増えてきていますが、特許分類を駆使した検索式などを使わなくてもキーワードで検索できるような、ある意味Googleのように気軽に検索できるような仕組みがあるといいのではないかと思います。

特許分析ツールでできることは8割エクセルでできる

実は、特許分析で必要なことはエクセルで8割がたできると思っています。特許分析ツールはフォーマットとして決まっているものしか出力できませんがエクセルは自由に加工できます。縦軸・横軸を自由に設定したりとか、あるデータと別のデータの比率を算出してみるとか・・・そういう既存のツールにはない自由度があるのがエクセルの良い点だと思います。

一部スコアリング、レイティングやテキストマイニングなど既存ツールと同じようにはできないこともありますが、これについてもVBAマクロを組んだり、無料ツールなどを使ってある程度対応できます。

最近では作業服のワークマンが脚光を浴びていますが、ワークマンの土屋常務が書かれた『ワークマン式「しない経営」』でエクセルを活用した企業風土改革を紹介されていますが、エクセルでも結構いろいろできると思いますよ。

知財専門家のコンサルティングを活用し、効果を最大化するために

基本的に、知財に限った話ではないですが、外部に委託する場合丸投げは絶対してはいけません。

頼むと何か「いい」結果が出てくると思っている方もいますが、そういう意識では成果物を最大限に活用できません。

自分たちがこういうことをやりたいという課題感や目的がはっきりしていることが重要です。なかには「特許情報分析で何か面白い新規事業開発案を出せない?」という感じでフランクに依頼をされる方もいらっしゃいますが、それだとお客様の思うような成果物はでませんし、ある程度のものが出たとしてもそれをうまく活用することは難しいと思います。

お客様は技術や自社事業・製品・サービスに詳しく、当社は特許分析やお客様の知らない業界・業種のトレンドに詳しい。情報の非対称性を意識して双方が一緒になって取り組まないで、一方的に専門家なら何か良い結果を出してくれるだろうと考えていると、成果に結びつけることは難しいのではないかと思います。

後半:特許分析とコンサルティング‐統計は噓をつく‐

【株式会社イーパテント】 http://e-patent.co.jp/

「知財情報を組織の力に®」をモットーに、知財情報をベースとした各種分析・戦略提案、コンサルティングサービスおよび人材育成・研修サービスを提供するブティックファームです。以下のようなメディアを通じて知財情報分析・活用に関する情報発信を行っております。

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