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ドイツがワクチン特許開放に反対。特許開放の行方は?

ニュースの概要

ドイツのメルケル政権は、製薬会社の特許権放棄について「知的財産の保護は技術革新の源泉で、今後もそうあり続けなければならない」とし、反対を主張しました。

つい先日製薬会社が持つ新型コロナウイルスワクチンの特許権の放棄を支持するとアメリカのバイデン政権が表明したばかりでした。

米国の支持表明により、世界貿易機関(WTO)でのワクチン特許を巡る交渉が進展すると思われていましたが、ドイツが反対を明確にしたことで、先行きが不透明となった形です。

背景

メルケル政権は、ワクチンの普及が進まないのは、「生産能力がないという点と、品質管理が難しいという点」であり、特許権にある訳ではないと強調し、バイデン政権の「特許放棄支持」に疑問を呈しました。

ワクチン開発にいち早く成功したビオンテックがドイツに本拠を置いていることも、メルケル政権が反対を表明する背景にあります。

国内は大手企業や大学が知財30万件開放、ワクチンや医療機器開発へ総力戦

新型コロナウイルス感染症の早期終結に向け、日本では2020年5月から京都大学やキヤノン、本田技研工業など20社の経営者や知財責任者を発起人として、「知的財産に関する新型コロナウイルス感染症対策支援宣言書」が打ち立てられました。2021年5月現在、国内大手メーカーや大学など101の機関が、自己の保有する知的財産権計92.7万件以上を無償開放しています。

同感染症の治療薬やワクチン、医療機器、感染防止製品の開発、製造、提供の迅速化が目的です。同感染症まん延の終結を目的に使われる場合、一切の対価や補償を求めないものとなります。宣言の有効期限は世界保健機関(WHO)が同感染症まん延の終結を宣言するまでです。

COVID支援宣言に基づくライセンスの実施例はこちら「COVID支援対策宣言を活用、日産の体温管理システムが感染症対策システムに利用される

今回の特許権放棄の問題は、特許の開放とはレベルの違う話であり慎重な議論が求められますが、日本のCOVID対策支援宣言に代表されるような知財の利活用は今後どんどん広まっていくでしょう。

COVID対策支援宣言発起人の一人である、本田技研工業株式会社知的財産・標準化統括部 統括部長の別所弘和氏へのインタビューはこちら

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