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「知を活かす経営戦略」北浜国際特許事務所 所長 前井 宏之氏インタビュー

北浜国際特許事務所 所長・弁理士(特定侵害訴訟 代理人) 前井宏之

【略歴】
大阪大学工学部 卒業、同大学大学院工学研究科 修了
1999年~2005年:山本特許法律事務所
2005年~2009年:㈱ベンチャーラボ
ベンチャー企業・民間企業、大学を対象とした知的資産の創造支援、
活用支援に関する経営コンサルティング業務に携わる
2010年4月:北浜国際特許事務所 設立
2012年10月:北浜グローバル経営㈱ 設立

憧れた知財の世界から経営コンサルへ

高校生の頃から知財の世界に関心があり、弁理士になりたいと考えていました。最近では「知財に関わる仕事がしたい」というような若年層も増えてきましたが、当時は珍しかったと思います。

はじめは実務家になろうと考え、ディレクション中心の企業の知財部ではなく、実際に書類を手がけたり法廷に立ったりできる特許法律事務所へ入所しました。

スペシャリストを目指し7年ほど特許法律事務所で経験を積みました。どうすればお客様に喜んでいただけるかを考えるうちに、「知的創造サイクルの創造・保護・活用を俯瞰できる立場で、上流から下流までのビジネスの全体像を知らないと仕事の質を上げるのは難しい」という結論に至りました。

そこで経営コンサル会社に転職し、知財の位置づけが分かるようになりました。知財戦略はそれ自体が目的ではなく、経営戦略があって、それを落とし込んだところに事業戦略、研究開発戦略、知財戦略の三戦略が定められ、各戦略に沿って実務家が仕事をするということを再認識できました。

企業における「知財の位置づけ」を理解した私は、2010年に北浜国際特許事務所を設立しました。自身の経験を活かし、戦略的な知財活用のサポートをしたいと意を強くしました。

2012年には経営コンサルを担う北浜グローバル経営を設立。自身が培ってきた強みを、世の中へのより大きなインパクトに変えたいと思ったためです。

―経営コンサルを融合させた「知を活かす経営戦略」とは?

知財戦略は、経営戦略の延長にあることを意識しなければなりません。経営層だけでなく実務家もそれを認識しておく必要があることを、経営コンサルの経験から身をもって知りました。「経営戦略に資するために」という基本の視点が身につきました。

そうなると、単なる書類の作成にとどまらず、企業の経営者やマネジメント層などの方々とディスカッションし経営に貢献できる仕事をしたいという理想を持つようになりました。

加えて、権利化業務を中心とした従来の特許事務所のビジネスモデルを再構成する必要性も感じていました。そこで、経営コンサル的アプローチへの転換を図り掲げたのが「知を活かす経営戦略」というスローガンです。同スローガンは、北浜国際特許事務所の組織全体で共有している価値観「MVVSS(①ミッション②ビジョン③バリュー④スピリット⑤スローガン)」の⑤にあたります。組織全体の価値観を共有する各分野のプロフェッショナル達が、「知財権利化」×「経営コンサル」の融合から生まれる新たな価値をお客様に提供していることが、他の特許事務所にはない独自性です。

北浜国際特許事務所 各分野のプロフェッショナルと共有している価値観「MVVSS」

知財権利化×経営コンサルの強み

北浜国際特許事務所では、一般的な特許事務所が主要業務としている権利化サポートに加え、北浜グローバル経営との連携による「知財権利化」×「経営コンサル」というアプローチを強みとしています。経営戦略の視点から「事業戦略」「研究開発戦略」「知財戦略」の三戦略を俯瞰的に捉えることで、三戦略が各部門単位で動く「部分最適化」に留まらない、三戦略の「全体最適化」に寄与することができます。

具体的には、クライアント企業との戦略的パートナーとしてマネジメント層の意思決定に必要な情報提供や、マーケティングの切り口からの戦略提案、自社や競合他社の知財ポートフォリオ作成に基づく戦略の提案などです。

―「知を活かす経営戦略」の事例はありますか?

実際に「知を活かす経営戦略」が奏功した大手メーカー様の実例があります。経営戦略への寄与と収益最大化を目的とし、今後の事業展開や研究開発の方針を理解した上で、モレやダブリがなく、事業戦略の進行状況を加味した権利化を可能にする出願スケジュールを立案・可視化しました。その中に、次の3つの戦術を組み入れました。

1.早期審査制度の活用

この事例では、事業化の進行状況により権利化のスピードが求められたためこの戦術を駆使しました。

特許出願から公開されるまでの1年6カ月の間にどれだけ特許庁の考え方を引き出せるかが鍵となります。場合によっては、審査官がどのような引例を挙げるのか、特許庁がどの範囲を先行技術と捉えているかを把握するために同制度を使うこともあります。また、先行技術の情報を共有し、研究開発部門の方々にご活用いただいたケースもありました。

他には特許査定がなされたことを確認して「この特徴があれば権利化できるのか」ということを把握した上で特許公報公開による公知化を回避するために権利化を取り下げるなどの手法もあります。

しかしこのような手法はどのような出願でも適用するわけではなく、経営戦略や事業戦略を共有した上で行ってこそ効果を持ちます。したがって、経営層の方々とコミュニケーションを取りながら行うことが極めて重要です。

2.海外特許権の取得

海外での事業展開の予定を把握していたため、この戦術を採りました。定期的なディスカッションと密なコミュニケーションがあったからこそこのような対応が間に合ったと思います。

また、日本の特許庁の考え方がわかっていた方が外国出願しやすいという考えもあります。そのため、国内外の手続きを全体的に俯瞰した上でスケジュールを策定する必要があります。

3.特許ポートフォリオ構築

早期審査制度の戦術的活用により他社に権利化されていない発明を短期間で把握・発掘し、改良発明として出願することができました。

特にこの戦術は、複数の発明を権利化して特許権の隙間をなくし、他社連携も視野に、パテントプールや標準化等による収益化にもつながります。

このような戦略のもとディスカッションを重ね、特許制度を理解・活用した提案によって、単なる権利化だけにとどまらない経営戦略への貢献が実現したのです。

想いを共有し大切にする事務所

私たちは「MVVSS」の中にスローガン「知を活かす経営戦略」があるということを定期的に所内で共有します。そうすることで、日々の業務を行う上での「想い」を同じくするのです。

どのような想いで仕事をするかによって、成果が大きく左右されると考えます。私たちはこれからも、お客様に伴走したい。同じゴールを見据えてくださるメンバーとともに精進していく所存です。

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