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「発明の裏付けとなる技術を徹底的に突き詰める」弁理士法人そらおと 代表 黒瀬泰之氏インタビュー

東京都江東区亀戸にて、IT系・電気系の特許を中心に、数多くの特許取得や特許権活用を支援する弁理士法人そらおと。今回はその代表社員 黒瀬泰之氏にお話を伺った。

知財との出会い

大学卒業後は大手電気通信事業者に入社し、交換機の運用・開発業務やモバイルマルチメディアサービスの企画業務に携わっていました。しかし、大手電気通信事業者で仕事をするうち、自分の関わる通信機器やマルチメディアサービスの技術内容についてもっと知りたいという想いが高まっていきました。弁理士という仕事ならば、もっと深い技術内容や最新技術に触れることができそうだということで興味を持ち、弁理士を目指し始めました。

そのような想いから弁理士試験の勉強自体は少しずつ始めていたのですが、大手電気通信事業者を退職するところまでは、なかなか決心がつきませんでした。弁理士試験結果の「合格」の二文字を見て、本格的に特許業界に入る決意をし、大手電気通信事業者を退職しました。30代に入った直後の頃でした。

新天地、特許事務所へ

大手電気通信事業者を辞して特許事務所の世界へ。

最初に入所した特許事務所に3年半ほど、その次の特許事務所に約1年弱に渡り勤め、そこからさらに3か所目の特許事務所へ移り、そこでは約10年にわたり経験を積ませていただきました。

以前勤めていた事務所で共に働いていた方と、いまでもお会いすることもありますよ。

直近で言うと、私はアジア弁理士協会IT委員会の委員長を務めているのですが、そちらの活動の中で、かつての職場でご指導頂いた弁理士先生と顔を合わせ、久しぶりに議論を重ねる時間を持つことができました。

独立前に、3つの事務所で通算14年7か月に渡り経験を積み重ねてきたことで、ひとくちに知財業務と言っても、事務所ごとに経営方針や弁理士業としてのスタイルはさまざまに異なるということを実感しました。

もちろん、どのスタイルが良いといったことではなく、どのようなスタイルが自分自身に合うのか?ということがポイントだと思います。 複数の事務所を経験する中で、自分自身のスタンス、特許業務との向き合い方を明確にしてから独立することができたことは非常に良かったと感じています。弁理士になってから15年目に、「そらおと国際特許事務所(現:弁理士法人そらおと)」を開設しました。

「弁理士法人そらおと」の特許出願方針

自分自身の経験に基づく話ですが、大企業がクライアントである場合、あらかじめ社内知財部を中心にどのような特許を取得したいかを固めてからご相談くださいますので、それを元に明細書を作成するということが特許事務所の業務の中心になります。

一方で中小企業の場合、そもそも特許を取る意味って何?という部分から悩みを抱えたお客様がご相談にいらっしゃいます。特に個人のお客様や小規模事業者にとって、特許出願の過程でのコストは負担になることもありますし、また特許は取得しさえすればそれで終わりというわけではなく、取得後も維持や管理に費用がかかります。

そのため、必要性の薄いものについては特許の出願を見合わせるようにアドバイスすることもあり、ときにはそれが長い目で見てお客様のためになることもあるのです。

弁理士法人そらおとでは、「無駄な特許を取らせない」「取れる特許を落とさない」をモットーに掲げ、クライアント様の支援をしています。

「無駄な特許を取らせない」

特に中小企業のクライアント様にとって、前述のように特許の出願・維持の費用は経営への影響も大きくなりますから、取得するのはその事業に役立つ特許であって欲しいと思っています。

しかしひとくちに事業に役立つ特許といっても、実際には容易なことではありません。様々な理論・事例を知り、クライアントの状況に照らして考え抜くことで、ようやく事業に役立つ特許を取得できる可能性が出てきます。当事務所は、事業に役立つ特許の取得・活用をサポートしていくこと、すなわち「無駄な特許を取らせない」ということを重視しています。

「取れる特許を落とさない」

特許出願しようとする発明について考え抜き、その結果として抽出した発明を明細書にしっかりと書くのは当然のことですが、出願前にどれほど考えたとしても考慮漏れは生じ得ます。その結果、特許庁による審査などで極めて近い技術が引用された場合に、差別化できず特許取得を諦めなければならなくなることがあります。発明だけでなくその裏付けとなる技術までもが明細書にしっかり書いてあれば、そのような場合においても引用技術と差別化できる可能性が格段に高まり、特許を取れる可能性が格段に高まるのです。このような考え方の下、当事務所は、発明の裏付けとなる技術を明細書にしっかり書くことを心がけています。

「弁理士法人そらおと」によるクライアントの特許権活用支援

現在は自分が経営者ですから、当然ですが自分自身の責任の元にさまざまなことを決定・判断できる裁量があります。そのため明細書のクオリティについても、自分自身も納得でき、またお客様にもご納得いただける品質を担保することが可能になっています。

そのような積み重ねをご好評いただいているためか、業務のご依頼も増えて事務所経営も安定し、また私自身の交友関係の幅も広がっているように思います。

そのことが私自身のやりがいにも、また事務所の品質向上にも繋がっていると感じますね。

知財部がない企業や個人のお客様の場合、ブレインストーミング段階からご相談に乗り、いわば発明支援や戦略策定の過程も含めて伴走させていただくこともあります。 弁理士という仕事は、依頼に忠実に書面を作成するといったイメージを捉えてしばしば職人に例えられることもありますが、職人の仕事が同じものを数多く製作することであるのに対し、弁理士の仕事は1件1件全く違うので、個人的には、一品物の作品を製作する職業、例えば「書道家」のようなイメージで捉えています。以前は「アーティスト」と言っていましたが、2023年夏クールで放送されていた「ばらかもん」を見て「書道家」に変えました。書道家は、文字という既に決まっているもの書くときに創意工夫を行います。弁理士も、ご依頼を頂いた時点で発明の内容は決まっており、それを明細書に書き留める際に創意工夫を行うわけですから、アーティストというより書道家に似ているのかな、と感じました。

出願のポイント

例えばお客様の発明が1つのシステムであり、その中に特許出願の対象となるような発明を複数見出すことができたととします。

そのようなときに、1つずつ別々に出願するのではなく、1つの出願にすべての発明を盛り込みます。すべて1つの出願に包含させるのです。すると、発明の間を埋める事項を書く必要が生じ、システム全体の適切な保護につながりますし、後に分割出願という方法によって、審査状態を延命する、引き延ばすことができるようになります。

そうすることによって、その特許を侵害しようとする者からすれば、脅威になりうるのです。複数の発明があるのであれば、別々に出願した方が事務所にとっては利益になります。しかし、それではお客様のためになりません。当事務所では、関連する発明は極力1つの明細書の中に盛り込み、分割出願を多用されるようにお勧めしています。

事務所名に込めた宇宙への想い

実は、学生時代は理学部物理学科に所属し、宇宙物理学者を志していたときもありました。若い頃から“物事の心理を知りたい”という想いを強く持っていたためです。その想いは、現在の弁理士業務にも生かされています。

事務所名の「そら」は宇宙、「おと」は宇宙から地球に到来する電磁波を表しており、またロゴ中の図形は電磁波(おと)を聴くための電波望遠鏡を表現しています。

私が学んだ宇宙物理学の世界では、1960年代にビッグバン理論によって予測される宇宙マイクロ波背景放射の発見という大きな出来事がありました。

弁理士法人そらおとの事務所ロゴの由来になっている電波望遠鏡を用いてなされた、20世紀最大の発見といっても過言ではないでしょう。

この世紀の大発見は、アメリカ合衆国のベル電話研究所のアーノ・ペンジアスとロバート・W・ウィルソンの2名による、不明な点をそのままにしない、徹底的な調査によって実現しました。

このような姿勢は特許事務所や弁理士の仕事の姿勢にも通じるものがあると、私は考えています。明細書の作成の過程においても、不明点を放置せず徹底的につきつめることによって、お客様の最良の結果を実現できるのです。

「弁理士法人そらおと」という事務所名には、常にこのような姿勢で業務を行うという決意が込められています。

そのような決意の具体的な表れとして、前述の「特許の明細書には、発明だけでなく、その裏付けとなる技術をしっかりと書く」ということを、1件1件の発明に対して、そして一人一人のお客様に対して、真摯にじっくりとおこなっていく。

それが弁理士法人そらおとによる知的財産権の取得・活用支援なのです。


弁理士法人そらおと:https://soraoto.or.jp/patent/