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知財リスクマネジメントと知財情報活用のありかた
『知的財産専門グループ』サン・グループインタビュー  代表 藤本 周一 編

株式会社ネットス 代表取締役
株式会社パトラ 代表取締役:藤本 周一

関西大学経済学部卒業 その後米国フロリダ工科大学(FIT)に留学
2000年 株式会社ネットス入社 国際部マネージャーとして外国の知財調査や解析を担当
2011年 同社代表取締役就任
2018年 サン・グループが特許情報普及活動功労者表彰受章
2021年 一般社団法人大阪発明協会理事就任、株式会社パトラ代表取締役就任

巡回特許庁、JICA、大分大学大学院、同志社大学、企業等で知的財産関連講演実績多数

主な著作物に「費用対効果に基づく外国特許出願国の選び方・進め方」(技術情報協会発行 共著)、「他社に競り勝つ!本当に強い特許実務対応」(情報機構発行 共著)、Japio YEAR BOOK2018,2019(日本特許情報機構発行)などがある。
関西知的財産協議会(NIPA)事務局長
(一社)特許情報サービス業連合会(FPIS)監査役
知財PeCo 事務局長
知財ガバナンス研究会 サポーター
日本ライセンス協会(LES Japan)会員

知的財産との出会い

弁理士であり、尊敬する父親の影響です。小学校の頃から、父親が特許・意匠に関する商品を自宅に持って帰ってきてみせてくれていました。父のインタビューで取り上げているおにぎりの包装などもそのひとつです(笑)

幼い頃は父の詳しい仕事内容はわかりませんでしたが、「なにか変わった仕事をしているんだな」と思っていました。

高校・大学と進むうちに、さまざまな業界を理解し、知財業界にも関心を持ちまして、フロリダ留学から帰国したタイミングでネットス社に入社し、特許調査の業務を行うようになりました。

就職したのは20数年前になりますが、当時は、海外の特許調査をする人があまりいませんでした。私は留学のおかげもあり英語が得意な方だったので、国際部門を自ら立ち上げ、海外の特許調査案件を積極的に担当しました。

当時は今のような便利な調査ツールがないなかで、直接海外の代理人にメールやファックスを送って、海外代理人と一緒に仕事をしていました。

もちろん現在は世界中のデータベースを使ってワールドワイドに仕事をしています。

ワールドワイドというと、20年前頃から海外案件が増加しましたが、国内市場に限界を感じ、国外へ進出したいと考える日本企業が増加したことから海外案件が増えたのではないかと思います。

20年前当時の案件は、アメリカ・ヨーロッパへの進出を希望する企業からの案件が中心で、中国案件はあまりありませんでしたね。今は中国案件やASEAN諸国の案件も増えています。

ちなみに当時は大企業を除き企業内に知的財産部がある会社があまりなかったため、案件を丸投げされる場合もよくあったので、大変な面もありましたがやりがいもあり、同僚や先輩達と夜通し仕事なんてこともありまたね。

現在の業務について

現在の仕事は経営者として、ネットス社パトラ社のマネジメントを行っています。

藤本パートナーズでは国際関係も担当しています。

最近は、コロナが落ち着いてきたことから、国内だけでなく国際知財のミーティングに参加し、サン・グループをPRするといった対外的な活動もしています。また若い世代向けにYouTubeやTwitterなどSNSを活用したPR活動も積極的に行っています。

サン・グループYouTubeチャンネル:https://www.youtube.com/@sun-group

NIPA(ニパ)/PeCo(ペコ)共に事務局長を担当

他の活動としては、私が事務局長をしているNIPA(ニパ)(=正式名称:関西知的財産協議会。会員100名ほど。50年間にわたり開催)という会があります。

NIPAは約半世紀前に当時の関西の特許部長たちが集まって設立した会です。会員の年齢層は少し高めの会です(笑)

設立当時は、特許部長たちが北新地などに集まってお酒を飲む会でした。私が参画した前後頃からは、勉強会+親睦を深める会になっていました。

コロナの時期はオンラインで開催していましたが、2022年11月頃からは再びリアルで勉強会や懇親会を行っています。

NIPAの勉強会テーマ

私は事務局長として、幹部メンバーと共に、勉強会の企画運営を担当していて、勉強会のテーマは、毎回昨今話題となっている知財関係のトピックから選定していて、集客のために講師選定にも力をいれています。

幹部メンバーが知財業界では名の通っている有名な方が多く顔が広いため、有名な講師の先生を招いての実践的な勉強会ができていると感じています。

知財PeCoの活動とテーマ

PeCo(ペコ)(=Pier of Exciting Creative Opinionsの略。意味:知的財産に関わるエキサイティングでクリエイティブな意見が集まる/発信するところ)の方は、まもなく設立20年になります。

こちらはNIPAと雰囲気が異なり若手中心です。知財部長を輩出するのも一つの目的で、現在のPeCo会長・副会長も知財部長になっています。

開催頻度は2か月に1度で、土曜日に開催しています。週末にもかかわらず、平均で50名程度が参加しています。休日に開催していることもあり、知財意識の高いメンバーが揃っているのも特徴です。

PeCoは受講型の勉強会ではなく、テーマについて各グループに分かれて、講師が提案した内容に対して、ディスカッションをし、各グループ(6~7名)の代表者が発表し、講師が講評する形で進めています。

知財の勉強に加え、ディスカッションや発表のスキルも身につくのが特徴です。

最近盛り上がったテーマは、「コーポレートガバナンスコードにおける企業の戦略」ですね。コンサルタントや弁護士も参加しているため、外部機関の立場と企業の方と一緒に議論をすることで、より議論を深めることができました。

あとは、「あなたがもし知財部長であったら、どういう戦略をとりますか」といったものや「ドローンを使って、どういうビジネスができますか?(知財を絡めて)」といった内容が盛り上がりましたね。

PeCoの活動にご興味あれば、私までご連絡ください。

知財情報会社、株式会社ネットスの事業概要

ネットスは、私が代表をしている設立36年の老舗の知財情報会社です。

特許だけでなく意匠分野においても調査・分析依頼も多いのが特徴です(年間100社/1000件ほど)。

調査依頼は、半数は侵害予防調査です。次いで無効資料調査・技術動向調査・SDI調査に関する案件が多いですね。

特許・意匠調査のポイント

特許・意匠調査をする場合に企業が意識すべきポイントは、リスクマネジメントの観点から他社権利に抵触するのを避けるという点です。

企業には、侵害予防の意識を高めて、少なくとも自社販売商品に関しては事前調査を徹底することを推奨しています。

とくに、アメリカや中国で知財侵害訴訟に巻き込まれると、訴訟費用・弁護士費用なども非常に高額となりますので、海外で販売する商品に対しては、とりわけ侵害予防調査を意識すべきだと思います。

中小企業からの依頼は増加傾向

海外取引が多く、アイテム数が多いメーカー・商社さんあたりからの依頼は増えています。商社というと意外かもしれませんが、これまで商社さんはメーカーに比べて侵害予防に関する意識が低い傾向にありまして、侵害調査をせずに安易に販売してしまい、訴訟に巻き込まれるといったケースが多い傾向にありました。

そういった点から、商社さんも意識改革を少しずつ進めているため、最近では事前の調査依頼が増えてきているのではないかと思います。

取引の途中で、取扱っているモノが他社の知財を侵害していることがわかり、発注をやめることも当然ありますし、意匠関係で調査をしたときに、取引先の海外企業が日本のデザインを盗んで売っていることが分かる・・・というケースもありました。

他社の知財を侵害していることがわかって、商社の場合は契約上製品の製造元が賠償義務を負うことも多く、損害賠償を免れる場合もありますが、たとえ損害賠償などの金銭的ダメージを避けることができたとしても、侵害品を取り扱っていたということでブランドイメージの低下に繋がってしまうこともあるので注意が必要です。

昨今の調査以来の増加は、訴訟が増えることで経営者の意識が変わってきた結果ではないかと思います。

現在注目している事項

やはり、コーポレートガバナンスコード改訂に伴う企業への影響です。知財情報の開示が求められる中で、自分たちのような外部機関がどれだけ企業に新しい価値を提供できるかが問われると思います。

企業の中で知財の重要性が増すことで、知財によるガバナンス構築や知財投資も今後益々増加すると見込んでいるので、自分たちもそこに貢献できればいいなと考えています。

我々サン・グループとしては、意匠分野が強みということもあり、デザイン系分野にも注目しています。父を含む意匠の専門家メンバーが、2019年に「デザインと法協会」という団体を設立しました。会員は、デザイナーや弁護士・弁理士、企業のデザイン関連の方々によって構成されます。デザイナーと知財関連の人たちが融合している団体は他にはないんじゃないですかね。

建築物や内装のデザインも意匠権が取れる時代になりましたし、デザイナーも知財を意識すべきだと思います。

知財業界志す人へ

日本の特許出願件数は減っていますが、世界で見ると特許出願は増えています。

今後、企業の更なるグローバル化が進むと想定されるなかで、企業のサポートを企業の中で行うのか、もしくは外部機関に所属して行うかという選択はあるかと思いますが、知財に触れていると新しい発見や刺激がたくさんありますので、そういう新しい発見や刺激に興味がある人にはぜひ知財業界への第一歩を踏み出してもらいたいと思います。

サン・グループ:https://sun-group.co.jp/

弁理士法人 藤本パートナーズ https://www.sungroup-pat.jp/

株式会社ネットス https://www.sungroup-nets.jp/

株式会社パトラ https://www.sungroup-patra.jp/

YouTube: https://www.youtube.com/@sun-group