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AIが描いたイラストの著作権はどうなる?【ズバリ!わかりやすく解説】

2022年は優れた性能を持つ画像生成AIが相次いでリリースされました。一方で、自分のイラストの個性が反映されたイラストを無限に作れる「mimic」のベータ版が公開からわずか1日でサービスを一時停止しました。ここにはAIと著作権の複雑な問題が絡み合っています。

著作権あるのか?

現行法では「AIが描いたイラストには著作権は発生しない」というのが結論となります。著作物というのは「思想または感情の創作的な表現」と定義されています。

そのため、思想や感情がないとされるAIが作成したものは上の要件を満たさないため、著作権は発生しません。

ただし、その作品の表現にどれだけ人間が関与しているかによって著作権が発生する場合もあるので注意が必要です。

著作権が発生する場合もあるので注意!

基本的にAIによる創作物には著作権はないものの、例外的に著作権が発生する場合もあります。

例えば、人間が作品を作るときに、自動補正ツールなどを補助的に使う場合は、著作物として扱われます。
また、構図や、イラストの独自性など細かくAIに指示を出して作成させたイラストについては、著作物であると扱われる可能性があります。ここの判断基準は、現行法では曖昧なところがあります。

関連記事:『AIが書いた文章は著作権の対象になる?』

著作権を侵害してしまうケース

AIが描いたイラストをTwitterなどのSNSで公開したいと考えたとき、あるいは販売したいと考えたときに、著作権侵害については特に注意をする必要があります。

たとえば、AIが描いたイラストに関する著作権侵害が起こりうる、気を付けなければいけない注意事項を挙げました。AIを利用する場合は要チェックです。

  1. AIツールやサービスの利用規約
    あるAIツールやサービスを使用してイラストを生成した場合、利用規約で許可されていない用途でイラストを使用すると、著作権侵害が発生する可能性があります。
  2. イラストの類似性
    AIが生成したイラストが、既存の著作物と類似している場合、意図しない著作権侵害が発生する可能性があります。AIは既存のデータを基に作品を生成するため、他の著作物との類似性が高まる場合があります。
  3. 第三者の著作権
    AIが生成したイラストが、他者の著作物を含む場合、その著作物の著作権侵害が発生する可能性があります。例えば、AIが特定のキャラクターや商標を用いてイラストを生成した場合などです。
  4. 著作権の所持者が明確でない場合
    AIが生成したイラストの著作権所持者が明確でない場合、著作権侵害が意図せず発生する可能性があります。サービスを提供している企業の問い合わせ先などがあるかもしれないため、念のため問い合わせてみたほうが良いでしょう。

これらの状況を避けるためには、AIツールやサービスの利用規約を確認し、必要であれば使用許可やライセンスを取得することが重要です。

もし、AIが生成したイラストをネットなどに公開する前に、サービスの利用規約や他の著作物との類似性、第三者の著作権に注意しましょう。

AIの学習に著作物を利用することは侵害になる?

上記のチェック項目でも取り上げましたが、AIは多くの学習データを基にしてデータを生成します。この学習データに著作物が含まれている場合について考えてみます。

結論として、「基本的に問題ない」と考えられています。

著作権法第30条の4によると、情報解析用には著作物を利用できるという旨の内容が示されています。

しかし、前述のとおり、ここで創作されたイラストがこの情報解析用として利用された著作物に類似している場合、著作権侵害となる可能性があるため、AIの創作物の利用の前には自分でチェックすることが大切です。

AIの創作物を自分のものとして主張できるか

著作権は、創作と同時に自動的に発生する権利であり、取得のために手続きを必要としません。しかし、AIの創作物に関しては、原則として著作権は認められません。AIの創作物を自分が創作したものであるとして自分の著作権を主張したらどうなるでしょうか。

結論、現時点では正確に判断する術はないのでまかり通ってしまいます。

著作権が認められる、人による創作物とそうではないAIの創作物かを外観だけで判別することは困難です。AIの利用の有無や程度について判断する方法について不透明なため、現在検討されています。

もちろん、この行為を助長しているわけではありません。虚偽の権利主張はやめましょう。

AIが作成したものを保護するには?

AIが作成したイラストは基本的に著作権が存在しません。つまり、誰でも利用可能であるということです。しかしAIの創作物に対して、著作権以外の権利を付与して保護する方法が存在します。

<商標権による保護>
AIの創作物を自社の商品やサービスに使用したい場合は、商標登録を行うことで保護することが出来ます。例えばAIが作成したロゴを商標登録することで、他社は指定した商品やサービスの範囲で、同一または類似のロゴを使用できなくなります。

商標登録をしたい方はこちら:『商標登録のやり方と検索方法、オンライン商標サービスも紹介』

<不正競争防止法による保護>
AIの創作物を、自社の商品や営業を表示するものとして使用する場合は、不正競争防止法によって保護される場合があると考えられます。

不正競争防止法について詳しくはこちら:「「鬼滅」類似グッズ販売容疑で4人逮捕 不正競争防止法って?」

AIイラスト生成に関する発明の特許は急増

AIイラスト生成に関する特許の出願推移をみることで、技術トレンドを知ることができますが、ご覧のように2018年頃から急増していることが伺えます。

そして、個別の特許からは、業界が抱えている課題や、その解決方法について確認することができます。

たとえば、以下のような『データ量を少なく多彩なキャラクターの表情が表現されるキャラクター画像を生成する』特許が見つかりました。

特許情報を簡単にまとめてみると、以下が読み取れました。

発明の概要:
本発明は、画像生成装置、画像生成方法及びプログラムに関するものです。

従来技術が抱えていた問題:
従来技術では、顔の表情を変更するために複数のパーツをそれぞれ変更することで、データ量が多くなり、スマートフォンのアプリ等での利用に適していないという問題があった。

本発明の目的:
本発明の目的は、データ量を少なくし、多彩なキャラクターの表情が表現されるキャラクター画像を生成することです。

このように、特許情報からはどのような発明で、何を解決するかという点を読み取ることができます。AIを使ったイラスト生成技術にどのようなものがあるかをチェックしてみることでビジネスチャンスが見つかるかもしれません。

まとめ

・AIが主体的に創出したものに関しては著作権が発生しない。

・AIを補助的に利用して人間が主体となって創出したものは著作権が発生する。

・AIを利用した創出物であっても著作権侵害をしてしまう場合がある。

・基本的にAIの機械学習のために著作物を利用しても問題ない。

・AIの創作物でも著作権以外の権利で保護できる。

・現行法では、曖昧な部分が多い。

このような特徴を理解してAIをうまく利用していく必要があります。特に、現行法では曖昧な部分が多く、権利侵害について判断が難しくなっています。

今後新たなルールが整備されていく可能性があるため動向に注意する必要があります。